【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
ギリギリ間に合ったけど、あたしは汗だく息切れ。
もう吐きそうなんだけど。
乱れる息を整えながら教室に入るドアを開けようとしたら
「なんだ、遅刻かよ」
上から聞こえてきた声にドキッとしてしまう。
顔を見なくたってわかる。
この声は……
「おい、大丈夫かよ?」
腰を曲げて、あたしを覗き込むようにする椎名冬夜。
「だ、大丈夫っ」
「あ? なんだお前」
「な、何にもないよっ」
「はぁ?」
ううう。
また目を逸らしちゃった。
わざとらしいにも、ほどがある。
そんなくらいに露骨に逸らしてしまった。
「じゃ、じゃあね!」
そう叫ぶように言うと、あたしは椎名冬夜に背中を向けて走り出した。