【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
屋上へ出ると、重いどんよりとした雲がやけに近い気がした。
先に外へ出ていた繭ちゃんがクルッとこちらを振り向いた。
「仁奈ちゃん、私はあんな噂信じてないからねっ」
やっぱり……繭ちゃんも知ってたんだ。
1年の女子まで回ってるって事は、もう学校中が知ってるのかな。
転入してきた繭ちゃんが知ってるくらいだもん。
皆知ってるよね。
椎名冬夜だって……。
「私、仁奈ちゃんがそんな事いう人だなんて思ってないからね!」
「うん……信じてくれてありがと」
「でも諦めさせてくれてるだけなら、それはそれで嬉しいんだけど♪」
テヘッて悪戯に笑う繭ちゃんに
「……へ?」
とマヌケな声を出してしまった。