【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
「別に何も言ってねーよっ」
そんな声とバタバタと遠のいていく足音。
そうして、ゆっくりと振り返った椎名冬夜はあたしを見下ろす。
「まじで何なの?
何が起きてんだよ?」
知ってるくせに。
繭ちゃんを助けた時に聞いてるでしょう?
「……羽田繭、関係?」
なに、その言い方。
知ってるくせに何でそんな遠まわしに言うの?
意味わかんないよっ!
「はぁー。
だから、わざわざ近付くなって言ってやったのに」
「あたし、そんな事してないもん!」
「……はぁ?」
「迷惑かけて悪かったって思ってるけど……
あたし、何もしてないっ!」
堪えていた涙が溢れ出して。
それを椎名冬夜に見られたくなくて。
俯いたまま、あたしは走り出した。