【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
「ちょっ……!」
「触らないで!」
あたしが椎名冬夜を支えようとしたら、繭ちゃんが叫んだ。
「仁奈ちゃんは、血をあげないんでしょう!?
私は冬夜君にあげれるもの!
だから、仁奈ちゃんは冬夜君に触れないで!」
泣き叫ぶ繭ちゃんの、この言葉が胸に突き刺さる。
だって本当のことだもん。
あたしは……椎名冬夜がこんな状態でも血の話になると躊躇ってしまう。
「繭、いい加減にしろ。
俺はお前を選ばないし、お前の血なんて飲まねぇ」
「冬夜君っ……」
「それに、血を飲ませてくれなくても。
これで十分だ」
そう言って、椎名冬夜はあたしを引き寄せ、あたしの頬についた血を舐めた。
「ちょっ!」
カーッと顔が熱くなって、思わず椎名冬夜を突き飛ばしてしまう。
だって、だって。
顔を、顔を……舐めたんだよ!?