【完】愛の血−超勝手な吸血鬼


「やっ……だぁ」



仁奈の、その声と。

俺の、声が交差する。



「何してんの、繭。
殺されたいの?」



仁奈に向けられていたナイフを掌で掴んだ。

感じたことのない異物感が掌に感じる。



滴り落ちる血。



それは人間と同じ、赤い色だった。

仁奈の白い体操服がぐるぐるに巻かれ、それはどんどんと赤く染まっていく。



俺はヴァンパイア。



血を飲む種族。

その俺が、こんなにも多くの血を流せばどうなる?

だんだん遠のく意識を無理矢理手繰り寄せる。



だって、俺は守らなきゃいけない。



コイツを。


< 272 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop