【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
ちょうどマンションの入口が見えた時、いつもなら気にもならないマンションの目の前にある公園に目を向けた。
キィーキィー。
風もないのに揺れるブランコ。
……恐っ。
これってオカルトだよ〜。
立ち止まりボーッと眺めていた時に、優しく吹いた冷たい風。
あ、早く帰んなきゃっ!
目を逸らし、また走り出そうとした瞬間、
――ドサッ
何かを落としたような音が聞こえた。
再び、公園に目を向けると黒い人影が公園内から、こっちに向かって歩いて来る。
ビューッと音をたて吹いた風で、灰色の雲の塊が風に流され、黄金に輝く月が地上を照らした。
多分、あたしと同じ歳くらいだよね?
公園から、真っ直ぐ歩いて来るのは背格好で男の子だとはわかったけど、月明かりのせいで顔が影になりハッキリとは見えない。
今時、珍しい真っ黒な少し長めの髪が印象的だった。
顔を少し上げ、あたしに気付いた男の子と目が合う。
驚いた表情を見せた男の子は立ち止まり、それを見ていたあたしはもっと驚いた。