【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
な、何あれ。
変な汗が背中をツーと流れたのがわかる。
足早に立ち去った男の子の背中が小さくなった時、思い出したかのようにさっき見えたパンプスに目を移した。
あれ……な、い?
さっき見た物がなくて、変な男の子に“殺すよ?”とか言われちゃって。
これって……も、もしかして。
ゆ、幽霊!?
嘘嘘、嘘、うーそー!
まじ有り得ないんだけどっ!
20歳までに見なきゃ、一生見ないって聞いたのにぃー!
全く霊感なんかなく16年も育って来たんだよ?
それなのに今更。
後4年だったのにっ!
いや、そんな事よりも恐い、恐過ぎるよ!
頭の中で、ぐるぐる回るさっきの光景。
そのまま走ってマンションに入り廊下を猛ダッシュしてドアを開けた。
――バタンッ
と大きな音が響くと奥から
「仁奈、静かに閉めなさい! それに今、何時だと思ってる……、どうしたの?」
怒っていたママが心配そうに、あたしを見た。
そんなママを涙目で見上げて
「ゆゆゆ、幽霊ーぃ!」
と叫んでしまったんだ。