蒼空~キミの名前を呼ぶ~
教室がザワザワと元に戻ったときだった。
誰かに後ろからキュッと制服の裾を握られた。
振り返ると顔を赤く染めて、
大きくてウルウルした目でオレを
見上げる美紗ちゃん。
それだけでも、
きっと大抵の男は美紗ちゃんに
惚れるだろうが美紗ちゃんは
その状態で、
「あの…、ありがとう。
あと、さっきは…ごめんね?」
ヤバい…!
これは天然でやってんの!?
男、殺す気か!!
「いや、オレこそごめん…。」
そうだよ!
元は全部オレだしな?
美紗ちゃんが謝る必要は……
「ううん、
神崎くんの言ったことあってるもん…。
ただ、逃げたかっただけなんだ……。」
今にも泣きそうな無理した笑顔を
オレに向けた美紗ちゃんを見て思った。
―――…オレならこんな顔させないのに。