シンアイ
断れない理由はあるんだけど、気軽に話せる話でもないし、ここは軽く流しておこう。

「別に優しいわけじゃないです」

「ふーん」

よかった、これ以上追及はされなそうだ。

「頼まれたら断れないってことは、もし俺が頼み事しても断らないってことかな?」

「ぐっ……」

まさにその通りで言葉に詰まってしまう。

「な、内容によります」

「じゃあさ、俺を助けて?」

「えっ!?」

あまりにも真剣なトーンだったから思わず御園蘇芳の顔を凝視してしまう。

今『助けて』って言った?

家柄も良くて、頭も良くて、女子にモテて、何を助けて欲しいのだろう。困ってることなんて無いでしょうに。あるとすればモテすぎるとか?

「…………なーんてね。そんなに見詰められるとキスしちゃうよ」

そう言われた瞬間思い切り顔を逸らした。
真に受けた私がバカだった!

「ホント君の反応は面白いね」

御園蘇芳は人の反応を見て面白がっているだけなんだ。

「サイテーです!」

御園蘇芳が持っている資料に手を伸ばす。油断していたのかあっさり奪い取ることができた。

「あっ!」

「ここまで運んでくれてありがとうございました!」

捨て台詞のようにお礼を述べて走りだした。



私はまだ知らなかった。
この日の出来事が悲劇の始まりだったなんて……。

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