風に恋して
今のリアの精神状態では何が起こるかわからない。万が一、赤い瞳のことがバレたらユベール王子は迷わずリアを奪おうとするだろう。赤い瞳の所有者――クラドールとして何倍も価値の増したリアを、彼らの争いに利用するために。

(リアを欠席させる、か?)

レオはそう思い、ため息をつく。

それができないことはわかっている。まだ不安定なリアを多くの人々の前に出したくはないのだが、リアが城に帰ってきたことは、おそらく噂になってしまっている。

本来毎回出席すべきリアは2度も続けて顔を出さなかったのだ。まだ “婚約”の段階とはいえ、未来の王妃が欠席続きでは貴族たちの不満も募るばかりだろう。

そして、ユベール王子の申し出を断るということは外交問題に発展しかねない。ヴィエントおう国が大国で力があるとは言っても、揉め事は避けたい。レオの個人的な感情で、国を動かすことは許されない。

レオはもう一度ため息をついた。

『わかった。すぐに招待状を送ろう』

その言の葉は、風に乗ってセストの元へと飛んでいった。
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