風に恋して
「怖い夢でも見たか?」

そっとその細い身体を抱きしめてやると、リアはレオにしがみついて泣き出した。

「っ、ふっ……おさえ、られな…………いや、なのに……」

どうやら、赤い瞳の力を解放する夢を見たらしい。

「リア、大丈夫だから。悪い夢だ」
「ぅっく……っ」

レオはそっとリアの頬に手を当てて、溢れて止まらない涙を拭う。

「ほら、泣くな。もう大丈夫だから」

それでも、リアの瞳からは次から次へと涙が零れ落ちる。レオはフッと笑ってリアの目じりに溜まっているそれに口付けた。

頬に伝う涙の道筋を伝うように、軽く唇を触れさせては離すのを繰り返しながら顎までたどり着く。

レオが顔を離すと、リアが潤んだ瞳でレオを見上げていた。

「泣き止んだな?」

クスッと笑って、リアの髪を耳にかけてやる。リアの翡翠色が揺らいだのがハッキリと見えた。

「ん、どうした?」
「……ぉ、まじない……」

小さく動いた唇。レオは息を呑んだ。

ああ、また……リアは記憶の海を彷徨っている。
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