風に恋して
「リ、ア……」

いけない。

目を逸らさなくては。

今は、リアをこれ以上記憶の狭間に引き上げてしまうようなことをしてはいけないのに。

リアは夢を見て、少し不安定になっているだけで。そこにレオがいつもの癖でリアの弱った心に思い出という風を吹き込んでしまった。ここで、止めなければ……

そう、わかっているのに。

「おまじない……した、の?」

翡翠色の瞳は、レオの記憶と同じように潤んでレオを見上げてくる。濡れた頬がほんのりと桃色に染まり、薄く開いた唇から漏れる吐息の音まで聴こえるよう。

「れ、ぉ……?」
「リア、ダメだ。それ以上は――っ」

レオの自制も虚しく……リアがギュッとレオのシャツの胸元を掴んだ。

そして――

「レオ……」

今までで1番、ハッキリと、リアがレオの名を呼んだ。その甘えた声がレオの中で弾ける。
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