風に恋して
目を開けてしまえば、リアがレオを見つめたまま熱い呼吸を繰り返している。

「――っ、リア」

額へ、まぶたへ、頬へ……何度も口付けを落としてもう一度唇を重ねる。

2人の吐息が交わる音、その熱が2人の体温と部屋の温度を上げていくようだ。レオの唇が、首筋を伝い、その熱い指がリアのナイトガウンの上着のリボンを解き、スリップの肩紐を引いた。

「……ぁ…………っ」

鎖骨に音を立てて口付けられ、リアが声を漏らした。露わになった肩を甘噛みし、レオの唇が肌蹴た胸元へと滑っていく。

だが、リアの心臓に唇を押し当てたところでレオはピタリと動きを止めた。

(ダメ、だ――)

月明かりに照らされたヴィエントの紋章に、レオは少しだけ冷静さを取り戻す。

リアを苦しめたくない。

夜が明ければ、きっとリアはまた偽物の記憶の底へと沈んでしまうだろう。そうしたら、レオを受け入れてしまった自分を責めるに違いない。

また、リアを危険に晒してしまう。

「――っ」

レオはグッと目を瞑り、できるだけ長く息を吐き出した。
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