風に恋して
――トクン、トクン、と優しい鼓動の音が聴こえる。

それをもっと感じたくて、リアは音のする方へと身体をすり寄せた。すると、リアの身体を包む温もりがより近くなって、ギュッと抱き締められた。

抱き締められて……

「――っ!?」

パッと目を開けると、少し肌蹴たシャツから程よく筋肉のついた厚い胸板が視界に映る。リアは思わず悲鳴を上げそうになって、慌てて口を閉じた。

ゆっくりとレオから離れ、視線を上げる。レオの瞳は閉じられていたが、しっかりと抱きしめられていて抜け出せそうにはない。

筋の通った鼻、意外に長い睫毛、目元にかかる黒い髪……そして、形の良い唇。

ドキッとリアの心臓が音を立てる。それと同時に昨夜の出来事が思い出されて頬が熱くなった。

そうだ。自分は昨夜、赤い瞳を使う夢を見て泣いてしまったのだ。そしてレオはリアが泣き止むようにと優しい唇で涙を拭ってくれた。

それから……溶けてしまいそうなキスを何度も交わした。どうしてだったのだろうか。リアはそれを受け入れた、いや、自ら望んだのだ。

(わ、私……っ)

リアは咄嗟に片手で口元を覆った。まだ、レオの熱が残っているような気さえする。レオの口付けの軌跡を、鮮明に思い出せる。

レオの唇が辿った場所が熱い。レオと触れている場所が、熱い。
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