風に恋して
「マリナ様はオビディオ様の側近を務めていた男の娘でした」

オビディオの即位に合わせて縁談の話が持ち上がり、ちょうど年頃の娘がいた側近に白羽の矢が立ったのだ。

2人は交流会などで何度も顔を合わせていたし、側近を務める父に会いに城への出入りの多かったマリナ……縁談はスムーズに進んだ。

婚約の儀、結婚式、そしてレオが生まれる。政略結婚ではあったけれど、2人はとても仲睦まじく、何の問題もないように見えた。

けれど……

「ヒメナ様が嫁がれたのは、マリナ様が城へ王妃として迎えられた後です。変だと思いませんか?」

姉であるヒメナよりも先に嫁ぐ。それも、王族との婚姻。貴族の娘が結婚する場合、ほとんどの場合が年上の者からだ。家に縁談が持ち込まれれば、特に理由がない限りは姉のヒメナが王妃候補となるのが自然。

「オビディオ様が、マリナ様をお選びになったのではない……と?」
「ええ。縁談は最初、マリナ様ではなくヒメナ様とのお話だったのです。そしてお2人は恋仲にあった」

そう言って、セストはノートのあるページを開き、リアの方へ向けてテーブルに置いた。リアがそれに視線を落とす。
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