風に恋して
父親に騙されて、ヒメナがカリストに嫁ぐことになってしまったこと。カリストと父親の思惑に気づきながらそれを防ぐことのできなかった自分を責める言葉がマリナの字で綴られている。

読み進めるリアの震えが大きくなっていく。

「そうしてヒメナ様はカリストの元へ、マリナ様はオビディオ様の元へ嫁ぎ、すべてが彼らの計画通りに進みました。けれど、たったひとつだけ……彼らも知らないところでそれが狂っていた」

セストはまたページをめくった。

『今夜、お姉様をお城へ招待することをオビディオ様とお父様にお許しいただいた』

そう始まっているその日の日記。

姉が嫁いでなかなか会えなくなってしまう前にと、尤もらしい理由をつけたこと。本当はオビディオとヒメナを最後にもう一度だけでも会わせたかったということ。

そして……

『オビディオ様、お姉様、ごめんなさい。お2人が後で今夜のことを思い出すのはつらいことなのかもしれない。それでも私は、お2人で愛を確かめて欲しかった。たった一夜でも、夢を見て欲しかったの』

その後の日記はマリナがレオを身ごもったことを知る日まで、あまり書かれていなかった。書かれていても、城での出来事やオビディオと公務の合間に自由時間を作って異国を回ったことなど些細なことばかり。
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