風に恋して
おそらく真実は……エンツォがカリストを殺め、それを外部からの襲撃に見せかけるために使用人たちも殺した。

「その記録ではエンツォも負傷していました。ヒメナ様には乱暴を受けた痕跡も残っていたと。それも、そのときのものだけではなくたくさん。ヒメナ様もエンツォと共に長年虐待を受け続けていたのです」
「――っ」

リアの頬に涙が伝う。ヒメナの境遇は、残酷すぎる。愛していた人と引き離され、違う男に嫁がされ、心が壊れてしまうほどの乱暴を受けて。

エンツォはそんなヒメナをずっとそばで見ていたのだ。それはある日、糸が切れるようにエンツォをその衝動へと駆り立てた。

計画的だったのか、発作的なものだったのか、カリストを殺めてしまった。

「母親と自分が罪を問われないよう、使用人も殺して自分にも傷をつけ、あたかも襲われたかのように状況を作り上げたと考えるのが妥当です。もちろんしばらくはエンツォにも疑いがかかっていました」

アレグリーニ家を狙った犯行で、当主や使用人たちが殺されているのにエンツォとヒメナは軽症で済んでいる。疑いがかかるのも当然。

ヒメナは乱暴されて精神を病んでしまっていたから、被害者とされたけれど。
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