風に恋して
「ところが、妙なことにしばらくして存在しないはずの“犯人”がつかまるのです。中流階級のある貴族の男とその男に雇われた暗殺者です」
「え……?」

もしリアとセストの推測通りエンツォが犯人だとしたら、それは矛盾している。

「彼らの記憶には確かにその日の出来事が描かれていました。ですから、事件は彼らを犯人として処理されました」

軍は事件を調べるときに嘘を見抜くため、自白があった場合には精神科専門のクラドールを使って記憶を直接調べる。つまり、彼らは嘘をついていない。

今のエンツォならばわかるが、当時彼にクラドールとしての知識などなかったはず。軍やその道に精通したクラドールを欺けるほどの記憶操作を使えるはずがない。

「この矛盾がある限りは私たちも彼らを犯人として考えるしかありません。その事件後、ヒメナ様はご実家に戻られました。エンツォはクラドールになるために養成学校へ……」

そして長い年月を経て、彼は国が誇るクラドールにまで成長しヴィエント城へと入る。

オビディオやレオに復讐をしたいと願っていた彼は、リアと出会い、レオを傷つける手段として彼女を選ぶ。
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