風に恋して
「リア」

部屋のバスルームの扉をノックしながらレオが呼び掛ける。しかし、聴こえてくるのはシャワーの水が流れる音だけだ。

レオはもう一度ノックした。

「リア、出てこい」

何度か呼びかけたが、リアは出てくるつもりはないらしい。イヴァンがレオの少し後ろで落ち着かない様子で扉を見つめている。

レオは呪文を唱えて手に風を集めた。そうして出来た手のひらの小さな竜巻をバスルームのドアの鍵に押し付けてそれを壊せば、パンと音がしてゆっくりと扉が開いていく。

「リア?」

シャワーの音が大きくなり、カーテン越しにリアがうずくまっているのが見えた。急いで駆け寄ってレオがカーテンを開けても、リアは膝を抱えたまま。

リアの長い髪も、白いナイトガウンも濡れて肌に張り付いている。そして何よりも、リアが身体を震わせている。

レオは急いで蛇口をひねってシャワーを止めた。

「リア!」

レオがリアの腕を引いて立ち上がらせようとするが、リアの身体は力が全くはいっておらず、レオはリアを抱き上げた。リアの身体はとても冷たくて、唇も紫色だ。
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