風に恋して
それからリアは大人しくレオに身体を拭かれ、着替えさせられ、ベッドに戻された。冷たい水に打たれたせいで熱が上がってしまったようで、リアの呼吸は荒い。

一通りのことを終えてから、レオは一旦外に出していたイヴァンを部屋に入れた。イヴァンはリアの熱と脈をはかり、カルテに書き込み始める。

「まだ熱が上がるかもしれませんね。あんなにずぶ濡れだったのですから仕方ありませんが……」
「悪い。俺が目を離したのがいけなかったな」

レオはリアの髪をそっと梳いた。リアはぼんやりとした表情でレオを見つめている。

「解熱の呪文を入れてやれ」

今回は風邪だろうから、呪文はきちんと効果を発揮するだろう。先日副作用のせいで苦しんだのだ。少しでも楽にしてやりたい。

「承知しました」

イヴァンが頷いて、リアの腕を取る。

「待って!」

すると、リアは勢いよく起き上がりイヴァンの手を掴んだ。レオもイヴァンも突然のことに驚いて、呆然とリアを見つめる。

「リア、様……?」
「呪文は入れないで……大丈夫、です……だからっ」

必死なリアの様子にレオは少しうろたえる。
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