風に恋して
呪文を入れなければ熱が上がって苦しいのはリアだ。最近は赤い瞳の力を使おうとしたことで寝込んだばかり。今回は呪文で身体が楽になる症状なのだ。拒む理由がない。

「リア、呪文を入れるだけだ。楽になるし、その方がよく眠れる。それに呪文を入れるのは痛いものでもないだろ?」

レオはリアの背中を擦って宥めるように言う。

「呪文がお嫌いなのでしたら、お薬にしますか?効くのに少し時間はかかりますが……」

イヴァンがそう言って、薬箱の中から小さな瓶を取り出した。

「薬も飲みたくないんです。お願い。どうしてもつらくなったら、自分で呪文を入れます。それくらいなら自分でも処置できますから、だから……っ」

イヴァンが困ったようにレオを見てくる。レオも頑ななリアにどうするべきか少し迷ったが、結局リアの希望を聞くことにした。

自分で処置できるというのは本当だし、どうしても我慢できなければ、きちんと対処するだろう。

「わかった。イヴァン、明日の朝また来てくれ」
「はい」

イヴァンは軽く頭を下げて部屋を出て行った。
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