風に恋して
ああ、彼女は……

「この濾紙をキレイにすべてはがしてください」

レオは、リアが城で一番優秀なクラドールは誰かと聞いてきたと言っていた。セストだと教えれば会いたい、と。会ったなら頼みがある、と。そして……この状況。

「球体は綿でできています。その綿が少しでも濾紙についてきたり、濾紙が球体に残っていたり、破けたりしたらアウト。意味は、わかっていただけますよね?」

セストはゴクリと唾を飲んだ。

リアは本気だ。彼女はセストに記憶修正をマスターしろと言っているのだ。

球体は本物の記憶、濾紙が偽物の記憶。それらを完璧に分離する。それが第一段階。おそらく次は濾紙――偽物の記憶――を跡形もなく消し去ることを求められる。

とても、繊細な呪文治療。

この模型のどれを崩してしまっても、脳に傷を作ってしまうことになる。

「リア、様」

セストが模型から視線を上げると、リアがフッと微笑む。

その意味は――
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