風に恋して
しかし、頭痛のせいでうまく気を練ることに集中できないために呪文の効果は薄いようだ。頭がガンガンして、一層大きく声が響いてくる。

――『リア。俺のことが好き、だろう?』

(違う!)

リアはグッと拳を握り、下腹部に意識を集中させた。水属性のチャクラの源――セントロと呼ばれる器官――はそこにある。できるだけ濃い気を練るように頭の痛みを忘れようと努める。

「……レシストレ、っ」

叫ぶように唱えるとスッと声が遠くなった。

その隙にリアは立ち上がり、出来る限り速く足を動かした。この状態は長く続かない。

レオは今夜留守にしていると言っていた。研究室へ行けば、誰かクラドールがいるかもしれない。いや、とにかく城の1階に行けば誰かに会える確率は高くなる。深夜とはいえ、働いている者もまだいるはずだ。

誰でもいい、助けを呼べる人に辿り着ければ――リアの意識が途切れるその前に。
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