風に恋して
しかし、ようやく階段までたどり着いたときには、また声が近くなって意識を保つのが精一杯の状態になってしまった。

(いや…………いや、誰か……レオっ……)

「レシ、ストレ……」

もう苦しくて呪文も途切れ途切れにしか口をついてでない。効果は半減以下。このままエンツォの気に意識を乗っ取られてしまえば、また記憶の拘束がきつくなってしまう。

忘れたくない。

(レオ……)

「リア様、ですか?」

その声に目を凝らすと階段下からイヴァンがリアを見上げていた。

「リア様!お加減が悪いのですか!?」

壁に背を預けて荒く呼吸を繰り返しているのがリアだとわかると、イヴァンは慌てて階段を上ってきてくれた。

「イヴァンさ……」

汗が額から流れるのを感じる。焦点がうまく合わせられない。だが、そのぼんやりとした視界でイヴァンがレオへの伝達をしたのが見えた。

「今、処置を……」

イヴァンがリアの手を取って脈を確認しようとして、リアはその手を掴んだ。
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