風に恋して
どのくらいの時間だろう、イヴァンはしばらくぼんやりと天井を見つめていた。

「あの……イヴァンさん、大丈夫ですか?」
「あ、はい。申し訳ありません」

リアの声にハッとして身体を起こすが、クラッと眩暈がして片手を床につき、もう片方の手で目元を押さえる。全身の力が抜けて廊下に倒れていたらしい。

「いえ、謝るのは私の方です。ごめんなさい、加減ができなくて……今、戻しますから」

そう言って、リアはイヴァンの胸に手を当てた。風属性のセントロが胸の中心に位置しているから直接送り込んでくれるのだろう。

それは、正確にイヴァンの波長に還元されている上に、イヴァン自身のそれよりも濃密に練られている。少量ですぐに眩暈も治まった。

「ありがとうございます。すみません、私の力不足です……」

リアの技術は桁違いだ。噂には聞いていたけれど、実際に処置を受けて身を持って知った。

自分の気を他人のそれに合わせることは高度な技術である。相性が良いとはいえ、他属性へのそれを寸分の狂いもなくできるクラドールがいるなんて。

「そんなことありません。私が使いやすいように、呪文も入れてくれたでしょう?」
「それは……」

イヴァンは完全にリアの気を再現することはできない。だから、せめて抵抗の呪文――最初からそれを混ぜて置けば、イヴァンの気とリアの気で効果が2倍になると思ったのだ。侵入しようとする1つの気に2つで対抗できるから。
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