風に恋して
「リア!」

そのとき、レオが息を切らせて階段を駆け上がってきた。今日は西地区の視察があるから帰りは朝になるかもしれないと言っていたのだが、先ほどのイヴァンからの連絡で急いで帰ってきてくれたのだと思う。

「リア、大丈夫か?」
「はい。イヴァンさんのおかげで……」

レオがリアに近寄って頬を両手で包む。

「お前、また熱が……」

そう言われてみれば少し体温は高い気がするが、ほんの少しであるし、最近それが続いているせいで慣れてしまったのか特につらくもない。

「でも、どうやって?」

確か今日向かったのは、西地区の中でも国境近く……すぐに帰って来られるような距離ではないはずだ。だからこそ、朝になってしまうかもしれないとレオは出かける前にリアに会いにきてくれた。

「あぁ……風を使って、帰ってきたから……」

一瞬で目的地まで辿り着ける呪文だが、人を運べるほどの風を巻き起こさなくてはならないために体力の消耗も激しいのだ。特に距離が遠いとそれに比例して疲れてしまうため、普段使うことはほとんどない。

「申し訳ありません。緊急事態だと判断しましたので……」
「いや、知らせてくれて助かった。とにかく、部屋に戻ろう。イヴァン、お前も来い」

レオに促されて3人はリアの部屋へと戻った。
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