風に恋して
イヴァンと別れ、自室に戻ってきたレオはベッドの上でぼんやりと思考の海に沈んでいた。

エンツォはこの城にいるはず、なのに……どうして見つからないのか。もし、本当にエンツォがこの城にいるのなら、何か仕掛けがあるはずだ。

それに……リアから風属性の力を感じた、と言ったイヴァン。

リアが水属性であることはレオ自身よく知っている。幼い頃から彼女の呪文には強い水の匂いが含まれていた。風など、感じたことはなかった。

なぜ……?

そして明日――いや、今夜は交流会。先ほどあんなことがあった後で、リアを出席させたくない。エンツォが城にいるなら尚更。

しかし、それも許されない……

レオは大きく息をついた。

考えることが多すぎる。それに、風の移動呪文を使ったせいで身体が重い。普段、ここまで疲れることはあまりないが、西地区の国境付近からの距離はさすがに遠かった。

レオが移動に風を使うのは他国の城へ公務で訪れるときくらい。その場合、城と城をつなぐ特殊な道が呪文で作られてあり、あまり体力を使わずに移動することが可能なのだ。

レオは片手で目元を覆って目を閉じた。

自分は……リアを守りきれるのだろうか、と。そんな不安を断ち切るように。
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