風に恋して
「リア様、こちらにいらしたのですか?」

そのとき、カタリナが会場の入り口の方から歩いてきた。リアはホッと身体の力を抜く。カタリナが声を掛けてくれて助かった。

カタリナは桃色のリアの見たことがない花がメインの大きな花束を持っている。新種なのだろうか。

「カタリナ。綺麗な花だね、どうしたの?」
「こちらはノエ将軍からリア様への快気祝いでございます。城下町で珍しいお花を見つけたと。裏で花瓶に分けて飾ろうと思いまして……」
「そうなんだ。美しいリアにピッタリだね?」

ユベール王子はそう言って、花びらを一枚ちぎってリアのグラスに入れた。淡い桃色の花びらが水に浮かぶ。

「さっきのお詫び。まぁ、側室の話は冗談だけど、クラドールとしては……本気で君が欲しいと思ってるから」

その笑顔が……ゾッとするほど美しいと思った。

「し、失礼します」

リアはこれ以上ユベール王子と一緒にいるのは危険だと思い、お辞儀をすると足早にレオの元へと向かった。

「ふふっ、でも妬けちゃうなぁ……記憶がないのにあんなに懐いちゃって、さ。あぁ……美しい花には棘があるんだよって教えてあげるの忘れちゃったな」

そのユベール王子の呟きは、リアには届かなかった。
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