風に恋して
レオは素早く向きを変えると、リアの肩を抱いて出口へ歩いていく。

「ぁっ……はぁっ、はぁっ、うっ」
「リア、もう少しだから」

呼吸が荒くなっていくリアに声を掛けるが、それが届いているのか定かではない。

「ぐっ、ぅっ……」

だが、扉までもう少しというところで、ふらふらしながらもレオに支えられて自分の足で歩いていたリアの膝がガクッと折れ、床に座り込んでしまった。

「リア」
「ころ、して……」

リアの口からそう呟きがこぼれ、彼女の細い手がレオの首へと伸ばされる。

「リア、しっかりしろ。自分を見失ってはダメだ」

この会場でオビディエンザは使えない。こんなに多くの貴族たちの前では誤魔化しも通用しないだろう。

オビディエンザは人間の意思を無視して服従させるもの。それが当たり前のように使われていた昔と違って、今は暗黙のうちにではあるが禁止されている呪文だ。奴隷制度が今はないように。
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