風に恋して
けれど、赤い瞳のことを知られるわけにもいかない。

(どうすれば……っ)

レオは自分の首に伸ばされたリアの手を掴む。

「リア、頼む。もう少しだけ歩けるか?」
「っ、う、はぁっ……こ、ろ……」

レオがリアの身体を強く引っ張っても、リアは床に張り付いたようにビクともしない。呪いのせいで彼女の力が増幅していて、抵抗されると抱き上げることも困難だ。

そのとき、自分の手がレオの首に届かないと判断したリアがレオに視線を合わせてくる。

「リア、ダメだ」

赤く染まっていく彼女の瞳。幸い、会場の扉の近くにいる2人――リアは扉のほうに顔を向け、レオに向かい合っているため、他の者たちにはリアの後姿しか見えない。体調を崩して座り込んでしまっただけのように見えるだろう。

だが、それも時間の問題だ。

何事かと、貴族たちの注目が集まってきている。

「リア!」
「ころし、っ……や、いや……助け、て……」

レオが名前を呼んだことで、ほんのわずかに正気を取り戻したリアがそう呟いたとき――
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