風に恋して

風の声

――風が、吹いている。

その風に乗って、声が聞こえる。

『うー、あ!きゃはっ!』

意味を成さない言葉と笑い声。

風が通り過ぎて行くと、急に身体が熱くなった。焼けてしまうのではないかと思うくらいに熱い。

「リア!」

リアが目を開けると、レオがパッと立ち上がって顔を覗き込んでくる。のろのろと身体を起こそうとすれば、背中を支えてそれを手伝ってくれた。

「リア、大丈夫か?」

リアは大きく呼吸をしながら頷いた。

「わ、たし……?」

水を飲んだら、意識が薄れてきて……頭の中が黒く染まっていくようで、自分を見失いそうになって。それでも聴こえてくるレオが自分を呼ぶ声に答えようとしたのだけれど、できなくて「助けて」と強く願った。

そうしたら……

「風、が……」

吹いた。誰かが笑っていた。
< 184 / 344 >

この作品をシェア

pagetop