風に恋して
――手を握ったけれど、その温もりはすでにリアを離れた後だった。

(あ……)

ゆっくりと起き上がって部屋を見回すけれど、レオの姿はない。

執務だろうか……

窓の外では太陽が一番高いところに昇っていて、かなりの時間眠っていたことがわかる。

「レオ……」

そう呟いたとき、窓からサァっと風が吹き込んできた。

『……ぁ……』

それと共に微かに聞こえた声。リアは夢の中でしたようにキョロキョロと辺りを見回す。

(気のせい?)

先ほど見た夢のせいだろうか。

リアはため息をついて、背中をベッドに沈めた。

熱はほぼ下がっている。また、微熱だ……

「レ、オ……」

目を瞑り、もう一度彼の名を呼ぶと、また風が吹いた気がした。
< 187 / 344 >

この作品をシェア

pagetop