風に恋して
「もちろん、恐怖はあるのでしょう。しかし、それとは違う何かが……」

セストはため息をついた。

何か、おかしい。喉元まで出掛かっているのに決定的な“それ”にたどり着けない。何かとても重要なことを見落としている気がする。

リアは鍛錬の手ほどきをしてくれるときも、最近少しぼんやりしているところがある。

体調が悪いのかと聞いても「大丈夫」としか言わないし、微熱続きの原因を一度検査して調べてみようかと申し出ても断られる。いや。断られる、というよりは……

(嫌がって……?)

考えすぎだろうか。

この城に来てから、赤い瞳の副作用や風邪、精神的なストレスもあっただろうから体調不良が出るのは特におかしいことではない。

だが、最近はレオにも心を許し、自ら記憶を取り戻そうとしているのに“ストレス”はないだろう。他の呪いなどがかけられている様子はないし……

もう1度、今度は更に大きなため息が出た。

リアもクラドールであるから自分の体調は理解しているはずだ。何かおかしければ、自分でもそれなりの処置はできるだろうし、セストも強くは言えないのだ。
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