風に恋して
「貴方は本当に人遣いの荒い人ですよね」

セストがため息をつく。

「仕方ない。こういう仕事はお前の方が向いているし、呪文の知識はクラドールであるお前の方が持っている」
「お褒めに預かって光栄です。これを、どうぞ」

レオがクッと笑うと、セストが胸元のポケットから何枚か紙を取り出してレオに差し出した。

「読みにくいという苦情は受け付けません。急いで写しましたので」

折り畳んであった紙を開くと、そこにはルミエールの古文書の数ページがあった。急いだ、と言った割に綺麗でハッキリと写された文字。そのうちの1枚は翻訳されたものだ。

「これを、ユベール王子が使えると?」
「はい。この古文書はルミエール王家に伝わるものです。王家の血を受け継いだ者しか入ることのできない書庫にありました」

レオは額に手を当てた。どうやってそこにもぐりこんだのかは聞かないことにする、というよりはなんとなく想像がつく。リアは諜報活動のために記憶修正を教えているわけではないのだが……

「失敗はしていないと思いますが……していたとしてもちょっと記憶障害が出るくらいでしょう。ちょうど良い鍛錬の場になりましたよ」

セストもレオの言いたいことを読み取ってニッコリと笑う。

「とにかく、1年前にリア様がこの城から忽然と消えたこと、1年もの間見つからなかったことを考えるとこの結論に至ります」

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