風に恋して
古代ルミエールの呪文、レフレクシオン。意味は、反射――光の波長吸収率と反射率を故意に狂わせて物体の色と形を変える幻術。

物体は光に当たると、その光のどの波長を反射するかによって人の目に映る色を変える。その波長自体をコントロールすることで、物体の吸収する波長と反射する波長を狂わせるのだ。

そうすることで、本来“赤”として人の目に届くものを“青”に変えることができるということだ。

つまり、リアは普通に生活していたけれど、彼女の周りの光を操作して外見が変わって見えた。おそらくエンツォ自身もこの呪文を使って誰にも気づかれることなく城を抜け、ヴィエント王国の小さな町に潜んでいた。

「気にも効果があると?」
「それなんですが……レフレクシオンは視覚的な錯覚を促すものです。私たちの属性感知能力まで誤魔化せるのかは疑問です」

属性感知とは、相手の気の質を感じ取れる能力のことだ。セストもレオもそれなりに他人の気の性質の区別はつくつもりだ。

「違う仕掛けがあるかもしれないということか」
「そうですね。今のところ、わかったのはこの程度です」

レオは頷いて古文書の写しをセストへと返す。セストはそれをポケットに入れてから、ふと気づいたようにまた顔を上げた。
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