風に恋して
「エンツォがノエ将軍になりすましていると思うか?」
「証拠がないので何とも言えませんが、今はリア様から遠ざけておいたほうが良いでしょう。それに、会議に連れて行けばユベール王子と接触するかもしれません」

セストの意見は尤もで、“ノエ将軍”から花束を受け取ったという事実がある限りは仕方ない。

「だけど、俺もお前も……リアだって、こんな近くにいるのに気づかないというのはおかしいだろ?」
「ええ……」

セストはふいにレオから視線を逸らした。

実は、セストには心当たりがあった。けれど、その“呪文”はお伽話のようなもの。今まで誰かが使ったという記録もないし、現実的にそれが可能かどうかと言われると答えはノー。

「セスト?」
「あ、はい」

レオに声を掛けられて、ハッと顔を上げる。

「とにかく、リア様も今はエンツォに対して警戒心を持っています。彼女が優秀だということはレオ様もおわかりでしょう?」

エンツォと十分に渡り合える。

「何かあれば、すぐに私たちに伝わるようにしていきます」
「わかった、それでいい。今夜の夕食は食堂に用意させろ。リアも呼べ」
「承知しました」

そう言って仕事に戻ったレオを見て、セストは軽く頭を下げて執務室を後にした。
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