風に恋して

風のいたずら

――ガタガタと、激しい音で目が覚める。

(ん、何……?)

まだ夢心地のままリアが身体を起こすと、窓が激しく揺れていた。だが、すぐにそれが止まり、今度は自分の身体を中心に風の渦が巻いた。

『んー!んー!』

一瞬、リアの身体がふわっと浮いた。ほんのわずかな慣れない浮遊感、そしてポスッとベッドの上に戻る。

「な、何?」

リアは驚いてベッドのシーツを掴んだ。

『うううー!』
「どこ、に行くの?まだ朝早いよ……」

いつもなら遅くまで眠っているはずの我が子はリアをどこかへ急かす様に声を響かせる。朝日がその頭をようやく覗かせるような早朝。

『んー!』
「わかったから……ちょっと、待って」

どうもぐずる子にため息をつき、リアはベッドを降りて夜着の薄いワンピースの上にガウンを羽織った。

すると、風が背中からリアの身体を押すように吹く。

それに促されるように、リアは部屋を出た。
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