風に恋して
王の部屋。

それはとても広い部屋だった。ソファやテーブルはリアの部屋にあるものよりも更に大きく、高価に見える。装飾品もたくさんあり、サイドボードの上には写真が飾られている。

「あ……」

リアとの、写真。

意外、だと思った。レオは……漆黒の瞳の印象が強いせいか、少し冷たい感じがするから、こんな風に写真を部屋に飾るのを想像したことがなかった。

もちろん、この城に戻ってきてからのリアに対するレオの態度から……そんな外見の印象とは違って優しく、リアには甘いということも、もう知っているのだけれど。

幼い頃から、成長を辿るように飾られた写真。最後のものは、1年前なのだろうか。リアの左手の薬指に指輪が光っている。

リアは最初の、リアとレオが一番幼い頃の写真を手に取った。

こんなに小さな頃から彼は自分を想ってくれていたのだろうか。いつか昔話をしてくれたとき、レオは初めからリアに惹かれていたと言った。

でもそれは、ハッキリとした恋心だったのだろうか?それとも、もう少し成長してから?この写真の、いつから?そして、リアはいつからレオに恋をしていたのだろう。

『最初、お前は俺の気持ちを受け入れてくれなかった』

レオはそう言っていたけれど、それはレオを好きじゃなかったわけではないと思う。そうでなければ、こんな心からの笑顔でレオの隣に立ったりしない。

「怖かった、のかな……」

リアは臆病だ。自分でもよくわかっている。それはきっと、恋に対しても同じだったのだろう。レオへの気持ちを自覚した今だって、レオの瞳に映るリアを求める情熱に困惑することがある。

まだ恋をしたこともなかったリアは、知らない感情に翻弄されることが怖かったのだと思う。
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