風に恋して
ひとつずつ写真を順番に手にとっては戻し、そんなことを考えていく。

(もう少し……)

もう少しで、思い出せそうなのだ。今なら、自分はきちんと本物と偽物を分けられる。レオとの思い出を取り戻せる。

それに、セストももう少しで記憶修正をマスターできそうだ。まだ偽物の記憶を残さず消すのに不安が残るけれど、それもすぐにコツをつかむだろう。

自力で思い出すにしても、セストに記憶修正を施してもらうにしても、あと少しだ。

レオを待たせている。けれど、リア自身もそのときを待っている。

記憶などなくてもレオのことは好きだし、もしも再び記憶を失くしたとしてもリアはレオに何度でも恋をするだろう。

だけど、レオと過ごしてきた大切な記憶はやっぱりこの心に留めておきたい。

「好き……」

そういえば、レオの前で言葉にして言ったことはなかった。昔の自分はちゃんと伝えていただろうか……

ちゃんと伝えなければいけない。レオのことが好きなのだと。

リアはお腹に手を当てた。

そして……この子のことも。
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