風に恋して
『まー』

そんな風に写真に目を奪われていると、声に呼びかけられる。甘えたように自分を呼ぶ声は、きっと……

「眠いの?」
『んー』

ふわり、と。また背中を押されて奥の部屋へと進めば、大きなベッド。リアの部屋のものとは違い、天蓋はついていないがやはり大きい。

リアは引き寄せられるように近づき、そっと横になった。

夜も明けないうちに出発してしまったのだろう。綺麗にベッドメイクされたそこからは、彼の温もりは感じられなかったけれど、彼の香りに包まれてリアはそっと目を瞑った。

『ぱー』
「うん……パパの、匂いだね……」

レオの腕に抱かれているような不思議な感覚だ。

『んーうー』

眠たげな声に、リアも眠りへと誘われていく。

その眠りから覚めたとき、何が待っているのかも知らずに――
< 210 / 344 >

この作品をシェア

pagetop