風に恋して
ふと、風が止んでリアはハッと目を開けた。

「……?」

いつもと違う視界に戸惑ったものの、すぐに今朝の出来事を思い出す。自分は風に導かれてレオの部屋にやってきたのだった。眠っているうちになのか、布団の中へともぐりこんでいたリアはなんだか恥ずかしくなって急いでベッドを抜け出した。

ベッドメイキングをし直し、そっと寝室を出てリビングスペースに入る。窓から差し込む光は暖かく、日も高い位置に上っていた。

またかなりの時間眠っていたらしい。少しお腹も空いている。

リアが自室を抜け出したことで、カタリナが心配していないだろうか。毎朝決まった時間に朝食を用意しにくるカタリナは、リアがいないことにすぐに気づくはずだ。

お腹の子もまだ眠っているのか静かであるし、もう鍵は開くかもしれない。そう思い、扉へと足を向けたとき――コンコン、とノックの音が響く。

セストはレオとともに出かけただろうし、レオが留守なのは城の皆が知っているはず。一体、誰がレオの部屋に訪れるのだろう。

「リア様?リア様、いらっしゃいますか?」

焦ったようなカタリナの声。少し身構えていたリアはホッと息をつく。

「はい。ごめんなさい、あの……」

どう説明すればいいのだろうか。鍵の開かないはずのレオの部屋に自分がいることは明らかに不自然だ。咄嗟に返事をしてしまったことを後悔する。

「ああ、良かった!朝食を用意しに伺ったらいらっしゃらないから、心配したんですよ!城中をお探ししました」

その声とともに、ガチャガチャと鍵を回す音が聞こえる。とりあえず、カタリナは不審な点に気づいていないらしい。
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