風に恋して
「あの、リア様……鍵が……」

どうやら外からは開かないらしい。リアは扉に近づいて鍵を回した。

けれど。

「内側からも、開かない、です……」

朝と同じように、鍵は固定されたようにビクともしない。

「そうですか」

外から聞こえたカタリナの声。リアは違和感を覚えてじっと扉を見つめた。

「カタリナ?」
「大丈夫ですよ。今、開けますね」

なんだか、抑揚がないように聞こえる。

「あ、開けるって――っ」

その瞬間、リアは弾かれたように扉から離れた。

それと同時にパン、と乾いた音がして重い扉が開いていく。

リアは部屋の奥まで戻り、じっと扉が開いていくのを見つめていた。足が、震える。
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