風に恋して
「ああ、リア様。ご無事で良かったです」

そして、完全に開いた扉から部屋に入ってきたカタリナはニッコリと笑顔を浮かべた。

「カ、タリナ……ど、どうして?」

カタリナはリアの護衛だと、レオが話してくれたことがあった。侍女としてそばにおき、いざというときには戦闘に対応できる。

けれど、彼女は剣術しか扱えないはずだ。だから、今朝の“いたずら”を解くことはできないはずで……

震える声で問いかけるリアに、カタリナは笑みを深くした。

「あら……私のことも、『思い出して』いただけたのではないですか?」

――『私のことも、思い出してくださいね』

いつか、カタリナがリアに言った言葉。そこに隠された意味に……どうして気づけただろうか。

お腹の子が“いたずら”をしたのだと思っていた。

そうじゃなかった。昨夜、レオがいなくなると知って泣き出したことも、早朝カタリナが来る前にリアを部屋から連れ出したことも、全部……リアを守ろうとしたのだ。

だって、今の、呪文を使ったときの気は――
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