風に恋して
「ねぇ、カタリナに君の護衛は務まっていたの?剣術だって俺の方がうまかった」

エンツォは、カタリナを殺めた。

「あぁ、誤解しないでくれ。俺は殺すつもりはなかったんだ。ちょっと身体を借りようと思っただけで、後で返そうと思ってた」
「何を、言って――」

信じられない。これが、エンツォ?

「本当だよ。ただ、初めて試した呪文だったし俺の理論もうまくハマらなかったみたいでさ……」

そのときのことを思い出したのか、エンツォがククッと笑った。

「君も察している通り、2つの精神が1つの身体に共存することは難しい。だけど、片方の精神を限界まで小さくすることでそれを可能にできると思ったんだ」

エンツォが両手の人差し指と親指でそれぞれ大小の丸を作る。

「カタリナの意識と俺の意識。2つの精神って、“光と影”みたいだと思わない?」
「やっぱり、ユベール王子も……」

リアの言葉にエンツォがニッコリ笑う。

「正解。ユベール王子に光の呪文を使って影を濃くしてもらったんだ。つまり、俺の意識が勝るようになった」

両手を重ね、右手の輪を小さくして左手の輪の中に入っているように見せるエンツォ。
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