風に恋して
「拒絶反応、は?」
「レフレクシオン」

反射の呪文――知識だけならば、リアにもある。

(そういう、こと……)

リアは拳をグッと握った。

光の呪文でカタリナの意識を陰らせ、更に反射の呪文でカタリナの意識に近づけたエンツォのそれを、カタリナの身体へと入れる。

カタリナの身体はエンツォを受け入れたが、今度はほんの少し混ざっていた本物のカタリナの意識に……拒絶反応を起こし、カタリナの意識は死んでしまった。

意識が死ぬということは、器(ニクタイ)を動かすものがなくなったということだ。もしかしたらエンツォがカタリナの身体を捨てた今こそ、カタリナが本当に死んでしまったというべき瞬間だったのかもしれない。

「私も、同じように隠されていたの?」
「そ。便利な呪文だよねぇ。何にでも効果があるだって」

エンツォは手を解き、「俺も使えるようになりたいなぁ」と言いながら、ソファに座った。

「まぁ、流動性のもの――気を隠すのは大変らしいんだけど、属性感知はある程度の距離がなければ出来ないわけだし、そんなの俺がレオたちを監視していれば解決だろう?」

つまり、エンツォは町で診療所を営んでいたリアに会いに来る傍ら、カタリナとしてずっとこの城にいたということ。
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