風に恋して
「どうして……どうして、こんなことをするの?」
「そんなの決まってる。復讐だよ。母さんが壊れたのはあいつのせいだ」

エンツォが吐き捨てるように言う。

「まぁ、あいつは俺が手をかける間もなく死んだけど。レオもさ、俺と違って将来が約束されていて、苦労も知らず、俺の存在すら知らず……暢気に恋愛にまで溺れて」

クッと、またエンツォが笑った。

「俺らは兄弟のはずだろ?母さんとレオの母親も姉妹だったんだろ?それなのに、なんでこんなに扱いが違う?」

その笑顔が……リアの心を締め付けた。

「母さんも俺も、あの忌々しい成金の屋敷で苦しんだ。挙句の果てに母さんは心を閉ざして。俺の、大切な、たった1人の――っ!」

エンツォが左手をサイドボードに向けて、同時にパリンとガラスの割れる音がする。写真立てが1つ、床に落ちた。リアがレオとレオの両親と一緒に写っていた写真。

「この力を使うたびに虫唾が走る。俺に王家の血が流れていると思い知らされる。黒い髪も、だ」

エンツォはグッと自分の長い髪を握った。綺麗な金色に輝くそれ。彼は、父親の面影を消したくて染めていたのだ。

「この、ダークブルーの瞳だけは母さんと同じだ。愛する人に捨てられた、可哀想な母さん……俺が代わりに復讐してやるとこの瞳に誓った」
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