風に恋して
エンツォはグッと奥歯を噛み締めた。

オビディオは何も知らずに暢気に城での生活を楽しんでいる。兄弟であるはずの、対等であるはずのレオも、両親に愛されて……

「それにさ、ヴィエントの王妃って“初めて”じゃなきゃダメなんでしょ?あれって面倒だしさぁ、すでにお手つきだったヒメナとはちょっと火遊びしたかっただけなんじゃないかなって」

だから、ヒメナの恋心を利用したというのか。

「それで、どうなの?復讐するの?」
「ええ。そのために、俺はここにいるのですよ」

低く響いたエンツォの声。それに満足したようにユベールはパン、と手を叩いた。

「そっか。じゃあ、本題!」
「本題?」

ユベールは頷いて、呪文を唱えた。パッと彼の身体が光って、少女の姿になる。淡い栗色の髪の毛が肩の辺りで少しウェーブがかっていて、瞳は綺麗な翡翠色だ。

「僕ね、欲しい子がいるんだ。リア・オルフィーノっていう、ヴィエント城の王家専属クラドール、リベルトとクラウディアの娘」

その姿がリアなのだろうと、エンツォはすぐに理解した。そしてまた、パッと身体が光ってユベールに戻る。
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