風に恋して
「ルミエールでよく紛争が起こるのは知ってるでしょ?クラドールが足りないんだよね。ていうか、数だけいても役に立たないみたいな?」

ユベールは肩を竦めてみせた。

「リアはまだ7歳なんだけど、才能のある両親の血を受け継いでいてリア自身もかなり高い技術を持ってる。これからも、もっと成長すると思う」

優秀なコマが欲しいということか。エンツォをヴィエント城へ潜り込ませ、彼女を攫う機会を伺いたいと言われているのだ。だが……

「ご存知の通り、俺はまだ鍛錬を始めたばかりです。何年かかるかわかりませんよ」

クラドールとして1人立ちするまで少なくとも6年。王家専属を目指すならばもっとかかるだろう。

「もちろん待つよ。僕が王になる頃に優秀なクラドールとして手元に置きたいんだ。現場で使えない成長過程をルミエール王国で過ごさせても邪魔なだけだ。それに、10年くらい待つと良いことがあるかもしれないし」

育てる手間は省きたいらしい。先ほどから無邪気な顔をして酷いことを喋っているルミエール王国の王子に、その国の気質が表れている気がした。

華やかな暮らしを満喫する上流階級と、それとは正反対に貧しい暮らしを強いられる庶民。裕福な者は貧しい者を理解できない。
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