風に恋して
何にせよ、それはエンツォには関係のないことだ。エンツォはとりあえず頷いて質問を続ける。

「では、良いこととは?」
「レオはリアのことが好きなんだよ。10年経ったらリアも17歳。レオとリアが婚約することになったらそれこそ素晴らしい舞台になると思わない?」

リアがレオにとってこの世で1番大切な人になるとき。形式的にも、実質的にも。

「その2人を引き離したら、ヒメナとオビディオ様の再現ができる。息子がそんな目にあったら、オビディオ様だってヒメナとのことを思い出して罪の意識に苛まれるかもだし。あぁ、彼への復讐は薬を盛るも剣で貫くも好きにすればいい」

とにかく、ユベールは成長したリアが欲しいということなのだろう。あとはエンツォの好きにしていいと言っている。

「協力は惜しまないよ。僕はこれでも結構役に立つと思うよ。さっきの呪文も今のルミエール王国では僕しか使えないし、赤い瞳の所有者も最近手に入れたんだ」

赤い瞳――水属性のクラドールに稀に見られる能力だと教科書には載っていた。こんな神のような能力を持った者が本当にいるのかと少々疑っていたが……

「それを使って彼らの記憶を?」
「君は賢いね。そうだよ。脳細胞を直接弄って記憶を元から変えられる。悪い話ではないでしょ?」

ユベールはそう言いながらエンツォの目の前まで歩いてくると手を差し出した。

「わかりました。仰せのままに」

エンツォはその手をとった。
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