風に恋して
「……っ」
「それなのに、オビディエンザを使われたのも“予想外”でさぁ……あいつは、愛する人にそんな扱いはできない、なーんていうタイプだと思っていたのに」

エンツォの指が唇からスッと降りて、リアの心臓の辺りで止まる。

「記憶がないのに、レオに心を許していく君を見ているのもムカついたし」
「――ゃっ」

リアの身体がピクリと跳ねる。エンツォの手が、膨らみを撫でたからだ。その手は緩々と下へ下がってお腹の辺りで止まる。

「俺に想いを寄せながらレオとキスをして、レオに抱かれて、子供まで孕んで……さ」

そのエンツォの表情に、リアは精一杯力をこめて、身体を捩り、エンツォの腕を引っ張った。しかし、エンツォの手に力がこもってリアの動きが止まる。

「ゃ……め、て」

掠れた声。ちゃんと声が出たかも、よくわからない。リアの頬に涙が伝う。

「交流会は、前座っていうか……成功すればラッキーくらいで。『素晴らしいパーティ』だっただろ?」

エンツォは相変わらず楽しそうに笑う。

「結局失敗したけどさ、レオと君の子の存在を確実にできた」

確実に2人の子供の存在を知る。レオを苦しめたい、すべてを壊したい、と。そう言った彼がリアの中の命を認識する意味は、ひとつしかない。

(いや……)
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